疥癬(かいせん)

Q:手のひらにかゆみを伴う赤いブツブツができました。数日後からお腹にも同じようなブツブツができ、夜も眠れない程かゆいです。仕事が忙しくてなかなか病院にいけないのですが、良い薬はありますでしょうか?

​A:手のひらを含む身体の皮膚にかゆいものが出来る状態には色々なものがあります。通常の湿疹や、蕁麻疹などもありますが、「疥癬(かいせん)」というダニの寄生によって起こるかゆみである可能性があります。「疥癬」はヒトからヒトに伝染する皮膚病ですので、自己判断で治療をせず、なるべく早く皮膚科を受診するようにしてください。

疥癬(かいせん)とは?

ヒゼンダニ(疥癬虫)という小さなダニが皮膚に寄生して起こる、激しいかゆみを伴う皮膚の病気です。主に手首や手のひら、指の間、外陰部、わきの下、そけい部などに多く発症します。ヒゼンダニは、卵から3~4日でかえって幼虫になり、若虫、成虫になるのですが、皮膚の角質に疥癬トンネルという横穴を掘り、そこに卵を産みつけていきます。性行為感染症でもありますが、同じ寝具やソファー、絨毯などを同時に使用したり、介護の現場で直接接触することにより、感染します。

疥癬(かいせん)の種類

疥癬(かいせん)には「通常疥癬」と感染力が強い「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2種類があります。
「通常疥癬」は、ヒゼンダニの数は数十匹~百匹程度と少なく、非常にかゆみは強いものの、皮膚症状としては赤いブツブツができたり、皮がむけたりする程度です。一方「角化型疥癬」は、ヒゼンダニの数が100万~200万と多く、角質(あか)が増えたような状態になるのが特徴です。

疥癬(かいせん)の治療法

ヒゼンダニの殺虫効果のある塗り薬または飲み薬を処方します。感染力が強い角化型疥癬の場合は、両方使用することもあります。塗り薬、飲み薬いずれの場合も医師の指示に従って適切に使用するようにしてください。治療には時間がかかります。根気よく、全ての症状が消失するまで治療を続けることが大切です。

身近な人が疥癬(かいせん)と診断された場合の対処法

ご家族など身近な方が疥癬と診断された場合は、感染しないよう対策が必要です。感染力が中等度の「通常疥癬」の場合は、なるべく別室で寝泊まりし、長時間肌と肌が直接触れないようにすること、タオルは共用しない、こまめに寝具やパジャマを洗濯するなどの基本的な対応で大丈夫です。

一方、感染力の強い「角化型疥癬」の場合は、個室で生活し、患者と接触する場合は、手袋等の着用が必須です。患者の洗濯物についても、他の洗濯物とは別にし、50度以上の熱湯に10分以上つけるなど、ヒゼンダニを殺すことが必要です。掃除もこまめに行い、場合によっては殺虫剤も使って二次感染を起こさないことが重要です。

通常疥癬であっても、同じ家で生活を共にする場合や、介護施設などで直接接する場合は、伝染することが多い皮膚疾患です。湿疹と思い込んで、ステロイド外用などの治療をしてしまうと、急激に悪化して重症になり、他者への感染もしやすくなりますので、正しい診断を受けることが非常に大切です。