Q:先月1人目の子どもを無事出産したのですが、出産後、排便時に痛みを感じる事があります。また、便と一緒に血液がでることもあります。肛門科にいくのは心理的に少し抵抗があり、皮膚科の女性の先生にご相談したいと思い、質問しました。

​A:出産後にこういったご相談をお受けすることは多く、「痔」であることもあります。ただし、便に血液が混ざるのは痔だけでは無く、直腸がんや大腸がんなどの消化管の病気の場合もありますので 注意が必要です。 肛門の痛みや出血があれば、本来ならば肛門科や外科の受診をお勧めしますが、外科的な診断や精査、処置が必要かどうか、当院で診察の上、ある程度の見極めは出来ると思います。

「痔」であったとしても、本格的な治療は肛門科や外科になります。皮膚科で出来ることは限られていますが、軽症の場合、軟膏処置や日常生活の注意で改善する場合があります。

出産と痔の関係

痔は男性に多いと思われがちですが、男性は周りに話してしまう傾向もあるため、必ずしも男性に偏っているとは言えません。むしろ、女性には月経の影響や骨盤の形、冷え性などが原因で、便秘や痔になりやすい傾向があります。​

そして女性にとっては、心身ともにとても大変な「出産」が痔を引き起こす大きなきっかけとなります。出産により子宮口付近の組織や肛門を締める肛門括約筋などが傷つくと、肛門機能障害が起こる可能性があります。

出産前から上がる妊産婦の痔のリスク

出産後の痔は、「出産時のいきみ」が直接的な原因であることは間違いありませんが、痔のリスクは「出産前から」上がります。主には以下の3つが大きな理由として考えられます。​

(1) 妊娠すると血液がお腹に集中します。これにより肛門周囲の血行が悪くなり、痔になりやすくなると考えられます。

(2) 妊娠中は黄体ホルモン(プロゲステロン)という女性ホルモンの分泌が盛んになります。これにより腸の動きが鈍くなります。さらに妊娠により運動量も減るため便秘になりやすくなり、結果として、便秘をきっかに痔になるリスクが上がると考えられます。

(3) 子宮が大きくなり周辺の静脈や腸が圧迫されます。これに血流が停滞して「うっ血」がつよくなります。結果として、便秘が悪化し痔のリスクが上がります。

健康なおしりを保つために

妊娠中は、常に産婦人科の担当医の指示を最優先にしてください。

ここでは健康なおしりを保つために大切な毎日の習慣についてまとめてみました。妊娠・出産以外のタイミングでも共通の事柄ですので、参考にしてください。

食物繊維や水分を十分に摂る
食物繊維は便の量を増やして軟らかくします。腸の運動も活発にします。水分も便を軟らかくし、便秘解消につながります。授乳中は水分の消費量も増えますので、しっかりとるようにしましょう。

規則正しい食事
規則正しい食事は胃腸の動きを活発にします。特に忙しい朝の食事は抜かしがちですが、時間がないときは水や牛乳だけでも構いませんので、朝食はとるように心がけましょう。なお、香辛料などの辛い物は肛門を刺激してしまいます。肛門に異常を感じるときは控えて病院へいきましょう。

同じ姿勢と冷えは避ける
立ちっぱなしや座りっぱなしなど、同じ姿勢を取り続けると肛門がうっ血しやすくなります。また冷えは血行を悪くし、下痢や便秘の原因となります。適度な運動や、毎日の入浴を心がけましょう。

トイレで強くいきみすぎない
排便の時に強くいきみすぎることは痔の直接的な原因になります。また日常生活においても瞬間的に力をいれる運動や動作は肛門に負荷がかかります。肛門に力をいれすぎないことを心がけましょう。