薬疹

Q:23歳女性です。昨日の朝から顔、首、腕、胸、背中、太もも、ふくらはぎなど、体中に赤い斑点が出来ました。今日にかけて、手のひらや足の裏まで広がっています。かなりかゆいです。前の日に変わったものを食べたわけでもないし、今は熱もありません。1週間ほど前に扁桃腺が腫れて発熱し、耳鼻科で数種類の薬を処方されて内服しました。扁桃腺の症状はほぼ治っています。いったい何の斑点でしょうか?

A:お話だけでは断定できず、診察をしてからの判断となりますが、扁桃腺の治療で内服した薬に対するアレルギー性の発疹(薬疹)の可能性があります。その場合は速やかに原因となっている薬剤の内服をやめ、治療することが大切です。一度薬疹を起こしたお薬は、今後内服や注射は出来ませんので、出来るだけ原因薬剤を特定することが重要です。

薬疹とは?

薬を内服したり注射したりすることにより生ずる発疹の事です。座薬でも薬疹を起こすことがあります。問題となるのは薬を投与されたごく一部の人に生ずるアレルギー性薬疹です。薬そのものの副作用とは異なり、薬に反応する細胞や抗体がある人(これを薬に感作された状態と呼びます)にのみ生じます。通常、薬に反応するこのような細胞や抗体が出来るのには内服を始めて1~2週間かかるので、薬をのみ始めてすぐにではなく、1~2週間経って初めて発症すると考えられています。本人は知らずに、すでにその薬と似た構造を持つ他の薬に感作されていた場合には、薬をのんですぐに急激な症状が現われることもあります。

薬疹のタイプ

紅斑丘疹型

体中に赤い皮疹が生じます。最も多い薬疹のタイプです。

固定薬疹

紫褐色調を帯びた丸い皮疹が、原因薬剤を摂取するたびに同じような部位(例えば口唇、おでこ わきの下、太ももの内側など)にじんわりと出てくるのが特徴です。後に長く茶色い色素沈着を残します。風邪薬や頭痛薬など、一時的にのむ薬が原因のことが多いため、見逃されてしまいがちです。しかし、繰り返すうちに全身に広がり、重篤な薬疹型に移行することもあります。

光線過敏型薬疹

日光に当たりやすい顔や手に症状が強く出るタイプです。原因薬剤は、抗菌剤、血圧降下薬、糖尿病治療薬、精神神経用薬など多岐にわたります。

蕁麻疹型薬疹

薬剤摂取後、すぐに出る薬疹です。機序としては、IgEが関与する即時型アレルギーが代表です。これはショック状態につながることがあるので、速やかな対応が必要です。

重症型の薬疹

スティーブンス・ジョンソン症候群

目、口腔粘膜、陰部粘膜など、粘膜を中心に発赤、びらんを生じます。皮膚にも発赤、びらん(多形滲出性紅斑)を生じますが、それが広範囲に及ぶと、次のTEN型薬疹に移行したと判断します。目の後遺症をしばしば残します。薬以外に、感染に対するアレルギー反応として生じる場合もあります。

TEN型薬疹(中毒性表皮壊死症)Toxic epidermal necrolysis

全身にびらんを生じ、100%熱傷に近い状態になるため、生命の危険性が最も高い最重症型の薬疹です。

薬剤誘発性過敏症症候群(Drug-induced hypersensitivity syndrome)

特定の薬物(抗けいれん薬など)が原因となり、肝機能障害や腎障害を伴う重症型薬疹です。薬を投与しているうちに、ヒト6型ヘルペスウイルスが再び暴れ出す(再活性化)事が重症化に関係している事が明らかになっています。

重症型薬疹の場合は、全身管理のできる医療機関に入院の上、治療することが必要です。

薬疹の治療

疑わしい薬の中止が最も重要です。軽症の場合は、原因薬剤の中止のみでも治癒する場合がありますが、中等症の場合は、抗アレルギー剤内服とステロイドの外用、または中等量のステロイドの内服を行います。ショック症状を伴う蕁麻疹型薬疹では、早期にショックに対する治療を行います。

*繰り返しになりますが、薬疹は、その原因薬剤が悪いわけではなく、薬に対する個々のアレルギー反応です。よくわからない発疹がでたら、早めに皮膚科を受診しましょう。

*一度薬疹が出た場合は、そのときの原因薬剤だけではなく、 似た構造を持った別の薬剤にもアレルギー症状が出る場合があります。薬疹を起こした薬剤がわかった場合は、必ず薬手帳に記入し、医療機関にかかるたびに知らせるようにしてください。薬疹は繰り返すとそのたびに重症化し、大事に至ることがあります。

*急激な発熱、呼吸がしづらい、全身に激しい発疹がある場合は、生命にかかわることがありますので、救急病院を受診して下さい。